法人が役員の社宅を借りる場合に徴収する社宅利用料

税理士 森田俊哉

2025/03/31 22:00

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 100%家族経営ではなく外部から役員を呼ぶような法人では、赴任してくる役員のために会社が社宅としてアパートを借りるようなことが多々ある。
 だが、本来であれば役員本人の住居なのだから本人が家賃を支払うべきであり、それを会社が負担することは経済的利益の供与となるため給与に該当する。
 
 社宅家賃が給与に該当するとなると、以下の問題点が生じる。
入居月の日割り家賃や更新料などが発生するために月々の支払額に変動があった場合、定期同額給与から外れ損金不算入の対象となる。
・所得税や社会保険料などの源泉徴収の額が増える。また、それに伴う給与計算も複雑化する。
 
 これについて、所得税基本通達36-40、36-41で社宅使用料をどのくらい取れば給与に該当しなくなるのかの基準が示されている。
 詳細な計算式はリンク先にあるが、固定資産税課税標準額を用いなければならない点がネックになる。
 アパート等の場合、固定資産税を支払っているのは大家であり、借りているだけにすぎない会社に固定資産税の課税明細書は送られてこないからである。
 管理会社などに聞けば教えてもらえることもあるが、当然教えてもらえないことも少なくない。このような場合にはどうすればよいのか。
 
 1つは、所基通36-40に書いてあるとおり、家賃の半額を徴収することである。
 現実的に所基通に書かれている計算式で算出した金額が家賃の半額を超えることは滅多にない。すなわち、家賃の半額という基準が示されているのは、家賃の半額を徴収していれば十分だと国税庁が認識しているということである。
 
 もう1つの方法として、賃借人であれば役所で固定資産課税台帳を閲覧することができる。手間はかかるものの、基本的にこちらの方が金額は低くなる。
 
 どちらを使うべきかはその役員の意向や招聘した経緯によると言っていいだろう。
 家賃を払うことに不満がありゴネるようであれば、家賃を取らなければ給与の控除額が増える旨を説明して最小限の家賃を負担してもらうのが得策であろうし、様々な会社の役員を歴任しているような人であれば半額を負担するものだという理解もあるだろう。
 また、個人的にはあまり推奨しないが、実質的には節税目的の資産管理会社や家族経営色の強い小規模な会社であっても、社長の家を法人名義にして自己負担額だけ自分で負担することで、残額を会社の経費とすることもできる。この場合には自己負担額を減らすために課税台帳を確認しにいった方が良いと言える。
 
まとめ
・役員に社宅を利用させる場合、一定の金額を本人に負担させないと給与扱いとなる
・本人負担額は家賃の50%か、所得税基本通達36-40、41を参照
 
 
参考
所得税基本通達36-40、41 役員に貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額の計算
タックスアンサーNo.2600 役員に社宅などを貸したとき
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