税理士登録手続き

税理士 森田俊哉

2025/07/01 21:20

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 税理士試験に合格し、2年以上の実務経験が既にあればすぐにでも税理士登録をしたいものでしょう。
 私自身もその思いだったのですが、具体的にどうすれば登録できるのかは調べてみてもなかなか分からず、そしていざ手探りで進めていくと思っていた以上に面倒でした。
 今後税理士登録する方が少しでも不安なく、かつスムーズに手続きを進められるよう、私が登録を受けた際の流れを記録しておきます。

 なお、令和7年に東海税理士会の登録を受けた際の事例であり、時期や地域によって違いがあるようです。
 あくまでも参考程度にお考えください。


1.税理士会へ連絡

 これが私が伝えたい最も重要なことであり、はっきり言えばこれに尽きます。

 試験に合格したことを確認したら、まず管轄の税理士会へ連絡してください。
 税理士試験の合否を決めるのは国税審議会ですが、実際に税理士登録を行うのは日本税理士会連合会(日税連)で、その窓口として各税理士会が事務を行っています。
 つまり、試験を取り仕切るのと登録を行うのは管轄が違います。
 そのため、税理士試験に合格してもその情報は日税連には届いておらず、こちらから合格した旨を伝えなければなりません。

 私はてっきり合格通知と一緒に登録手続きの書類が来るものと思っていたのですが、日税連から届くのは合格証書と「合格おめでとう。登録についてはお前の住んでる場所の税理士会に聞いてね(^^)v」と書かれた1枚の紙だけです。


 しかも、令和5年の試験の際に合格発表前に通知が届いた受験生がいたらしく、それ以来通知が届くのが遅くなったようです(恐らく国税庁のHPで科目合格者も確認できるようになった代わりに合格発表日に通知を郵送するようになったのだと思います)。
 したがって、私の場合、金曜日に官報合格を知り、翌土曜に合格証書が届き、週明けの月曜日に東海税理士会に電話をしたことでようやく登録手続きを始めることができました。
 たかが1営業日遅れただけではありますが、合格すると一刻も早く手続きを進めたくなるので非常にもどかしい週末を過ごしました。

 また、可能であれば申請書類は書留等で送ってもらうようにしてください。
 私の場合、月曜に普通郵便で送ってもらったのですが木曜になっても届かず、もう一度連絡して速達でもう一部送ってもらいました。その翌日の午前中に速達が、午後に普通郵便が届いたので、発送方法の違いで実に3日の差が生まれたことになります。この3日間も非常に待ち遠しい思いをさせられることになりました。

 なお、税理士登録は随時行われているわけではなく、毎月1回締切日があり、その1ヵ月間に受理された申請がまとめて処理されるため、税理士会への連絡が1日遅れたからといって実際に登録されるのが1日遅れるわけではありません。とはいえ再三語るように一刻も早く手続きを進めたくなるものなので、すぐに税理士会に連絡するべきです。
 あなたが合格したことをまず誰に伝えるべきか。家族でも友人でもありません。税理士会の事務局なのです。


2.日税連のHPから登録の手引き等をダウンロード

 「税理士登録」で検索すれば出てきますが、日税連のHPで税理士登録の手引きや申請書等の書類が公開されています。
 基本的には手引きに書かれているとおりのものを用意すればよいため、税理士会からの書類が届く前から準備を始めることができます。
 書かなければならない事項が非常に多いため、パソコンで入力した方が楽です。また、東海税理士会の方によると、会計ソフトのfreeeで申請書類一式を作成できるそうです。

 なお、過去の職歴を記載する欄が2カ所(申請書と履歴書の両方に書かなければなりません。申請書類の作成が面倒臭い理由の1つです)あるのですが、無職期間も含め1日も空きがないように記載することを求められます。
 過去の勤務先など、入退職の日付が多少曖昧でも月の初日・末日や給与の締日などにしておけば問題ないかと思いますが、2年の実務経験に含める勤務先については源泉徴収票の添付などが求められるので正確に書くべきでしょう。
 また、私の場合、後述する大学の卒業証明書に記載された卒業日が3月15日とかその辺りでしたが、申請書には3月31日卒業と書いて提出してもそのまま受理されました。学校の卒業日を3月31日にする程度ならば許容範囲ということでしょうか。


3.用意しておく書類

 日税連のHPから入手できる書類以外にも、こちらで用意しなければならない書類がいくつかあります。

手引き記載のもの
・証明写真 3枚
・住民票の写し 1枚
・身分証明書 1枚
・直近2年分の確定申告書 1式
・2年の実務経験に含む勤務先の印鑑証明書 1枚

東海税理士会から別途求められたもの
・証明写真 +1枚
・住民票の写し +1枚
・直近2年分の確定申告書 +1式
・直近2年分の源泉徴収票 2式
・2年の実務経験に含む勤務先の印鑑証明書 +1枚
・大学(最終学歴)の卒業証明書 1枚

 税理士会による違いが大きい部分かと思いますが、手引きに書かれているよりも多い数を税理士会が求めてくる資料が結構ありました。
 私の場合、先に手引きに書かれた数を用意していたので、後からもう一度証明写真を撮りに行ったりコンビニで住民票の写しを取ったりしなければなりませんでした。特に勤務先の印鑑証明書を追加で取ってきてもらうのは(とりわけ既に退職している場合)気が引けるので、この辺りは税理士会からの資料が届いてから用意した方が良いでしょう。

 また、身分証明書(本籍地でなければ発行できません)や大学が遠隔地にある場合の卒業証明書は入手に時間がかかる場合があるので、郵送請求する場合などは事前に手続きを調べておくと良いかもしれません。
 また、入手が遅れる場合には税理士会にその旨を連絡して他の書類だけ先に送るのも手です。

 確定申告書と源泉徴収票が両方必要なのか、確定申告してあれば源泉徴収票は不要なのかははっきりしません。手引きには「確定申告書に給与支払者の名称が書かれていれば源泉徴収票は不要」との記載がありますが、特に個人事務所の場合は屋号と事業主の氏名の違い等によるトラブルを防ぐためにも両方送っておくに越したことはないでしょう。
 東海税理士会ではどちらも必要ということになっていました。手引きには書かれていませんが所得の内訳書や送信票も送ってほしいと言われました。


4.書類の送付

 書類一式が準備できたら税理士会に送ることになりますが、東海税理士会の場合、先に一度下書きをメールで送り、OKを得たうえで本稿を郵送することになっていました。税理士会によるとは思いますが、なにぶん資料が多く書き方も細かく指定されているので、同じように一度下書きを送らせる所が多いのではないでしょうか。そうしてもらった方がこちらとしてもありがたいです。
 下書きと言ってもパソコンで作成してあれば印刷して自署欄に名前を書くだけなので大した手間ではありませんし、特に問題なければそのまま本稿として使えます。在職証明書だけは事業主の署名欄を空白のままで下書きとして送り、OKが出てから事業主に署名してもらうのが良いです。

 下書きの際に私が受けた指摘としては、過去の勤務先の所在地が政令指定都市の場合は都道府県名を省略しなければならないところを都道府県まで書いていたことでした。
 政令指定都市の場合に都道府県名を省略すること自体は手引きに記載されているので自身や現在の勤務先の住所を書く際には意識していたのですが、職歴欄までは注意が及びませんでした。


5.実態調査

 書類を送付すると、支部の登録調査委員に実態調査をおこなってもらうよう東海税理士会から連絡がありました。税理士として活動していくための環境が整っているのか、届け出た事務所所在地を調査委員が訪問して事務所としての実態があることを確認する手続きです。
 私の場合は既に存在している事務所に勤務し続けることになっていたこともあり、形式的なもので完了しました。30分程度ではありましたが、事務所の代表を含む3人で話をしているうちに自分が税理士になるのだという実感がしてきてなかなか有意義な時間でした。


6.登録通知が来る

 あらかじめ教えられる登録予定日の翌日頃に、事務所に登録通知が来ます。
 と言っても1枚の葉書に番号が書いてある程度の簡単なものです。タイトルのとおり、本当にただ「来る」だけという感じです。


 この手紙が来たのをもって正式に税理士として活動できるようになります。
 額に入れて飾っておいても良いような結構大事な書類だと思うのですが、葉書1枚で済まされてしまい拍子抜けと言うか何と言うか…。飾るなら合格証書にしろということなのでしょう。


7.税理士証票授与式

 登録通知など実際のところ大したイベントでもなく、実態調査が終わると2ヵ月ほど特に何もない期間が訪れます。
 そして、試験合格後最速のスケジュールでいくと3月初に税理士証票授与式という式典に出席することになるため税理士会本部へ行くことになります。
 読んで字のごとく税理士証票(身分証明書のようなものです)を授与する式なのですが、約2ヵ月の間に試験合格の喜びも薄れ、確定申告の繁忙もあって次第に「わざわざ本部まで行くの面倒臭ぇ」という思いの方が強くなってきます。
 …が、いざ出席するとやはり自分が税理士になったのだという自覚を改めて抱き気持ちを新たにすることになります。
 授与式自体は数十分程度で終わり、その後にやたら熱意のある(かどうかはその人によりますが)本部の人による税理士法についての講義などが1~2時間ほど行われます。東海税理士会の人は本当に熱かった。
 配布される資料が多いということは事前に聞いていたものの、想像していた以上に多く、かなりの量と重さがあります。私は自分のことを筋力がある方だと思ってはいますが、それでも腕が抜けるのではないかと思うほどでした。キャスター付きのスーツケースで行った方が良いレベルです。


 その後は各支部の税理士会に顔を出して主に支部単位で活動していくことになりますが、流石に支部による違いも大きくなるでしょうし書いていたらキリがないのでここまでとします。
 登録手続きは本当に色々と面倒ですが、合格したままの勢いで進めれば割とどうにでもなります。税理士会の人も協力的なので、何かあれば税理士会に聞きながら進めれば良いでしょう。
 そして、税理士試験の受験中の方には合格後のイメージを持っていただき、試験勉強のモチベーションにしていただければ幸いです。

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